古く平安時代の宮中では1月1日に「元日の節会（せちえ）」が開かれ、その席で食される行事食を「御節供（おせちく）」と呼んでいました。また江戸時代には年間の特別な行事を行う日として、幕府が「五節供」を制定。五節供とは1月7日の「人日（じんじつ）」、3月3日の「桃の節句」、5月5日の「端午の節句」、7月7日の「七夕（しちせき）」、9月9日の「重陽（ちょうよう）」を言いますが、人々はその季節の変わり目の節句ごとに、神様にお供え物をしてきました。この「五節供」よりも重要で別格の行事とされたのが「正月」です。そしてその「正月」に食される「御節供（おせちく）」が広く庶民に広がり「おせち料理」と呼ばれるようになりました。元旦には年神様が家々を訪れます。古くから正月三が日はその年神様を水で流してしまわないよう水仕事を控え、煮炊きを慎むという風習がありました。そのため「おせち料理」は日持ちのする濃い味付けのものや、甘く煮詰めた料理など、作り置きのできる料理が中心となっていきました。

「おせち料理」を重箱に詰めて重ねるのは、めでたさを重ねるという意味が込められています。伝統的な「おせち料理」は壱の重から与の重までの四段重ねが正式です。壱の重には口取り・祝い肴、弐の重には焼き物、参の重には煮物、与の重には酢の物・和え物を詰めるのが基本です。他にも壱の重に祝い肴三種（黒豆・数の子・ごまめ）、弐の重に口取り、参の重に海や川の幸、与の重に山の幸を詰めるという習わしもあります。地方や家風によっては五段重の場合もありますが、最近では家族も少人数になり、簡便に三段重のところが増えているようです。

「おせち料理」には五穀豊穣・不老長寿・子孫繁栄などのさまざまな祈りが込められていますが、祝い肴三種はその代表的なもので、田作り（ごまめ）・黒豆・数の子の三種にお餅があればお正月を迎えることができるとさえ言われています。他にも腰が曲がるまで長生きできるという海老、めでたい紅白なます、慶びを表す昆布巻、財宝を表す金団（きんとん）、土地にしっかりと根付く牛蒡など、ひとつひとつの意味を噛み締めながらいただくことも大切でしょう。

もともと農耕民族である日本人にとって、お正月は一年で最も特別な行事です。暮れの内に大掃除を済ませ、床の間には正月の花を設え、玄関にはしめ縄を飾り、門松を立てて歳神様を迎えます。新年の朝、子どもたちの枕元には新しい真っ白な肌着がたたんで置いてあったものです。そのような幸せな光景をいつまでも無くさぬよう、美しい日本の伝統を次の世代に受け継いで行きたいものです。お正月にご家族みなさまが顔を合わせて、また一年健康で幸せに過ごせるよう歳神様にお祈りしつつ、「きらら亭の美味しいおせち料理」で笑顔になっていただければ誠に幸甚でございます。